「家族」の問題を勉強するための本

このへんは社会学の領域になると思うのだけれど、家族って何、子育てって何、ジェンダーって何、みたいなことはどんな風に研究されているのでしょう?

とりあえず、私が読んだ本で印象に残っているものをリストアップ(順不同)。


『お母さんは忙しくなるばかり』 ルース・シュウォーツ コーワン
主婦の家事労働は、時代と共に軽減されているわけではない、という話。 機械化等で軽減された分、新たな家事が増えてるってこと。

『失われる子育ての時間』池本美香
親が子育てする権利が失われつつあるのではないか?というご意見。

『近世の「家」と家族-子育てをめぐる社会史』太田素子
江戸時代の子育てについて。「世間」が規範となっていて、後ろ指をさされない子を育てることが目標。家の跡継ぎを育てるという意味で、父親の育児参加は当然の責務、母親の仕事とされたのはむしろ近代以降らしい。など。

『21世紀家族へ』落合恵美子
今、自分たちが思い描く「家族」は近代の産物である、など。94年初版、私が読んだのは04年の第三版だけれど、内容は古びていない。とても読みやすく分かりやすい。

『女性同士の争いはなぜ起こるのか』妙木忍
戦後日本の主婦論争についての考察。私には、負け犬論争のところが面白かった。あと、アグネス子連れ出勤論争。最近の、男性首長の育休の是非についての論争って、実は今までの主婦論争の系図の上にのっかるものなのかなーとなんとなく思った。アグネス論争と似てなくもない。

『主婦論争を読む』上野千鶴子
30年前の本なのだけれど、専業主婦の意義とか女性が働くとかいうことについての議論の変わらなさには、驚くというか、げんなりと言うか。第一巻収録の梅棹忠夫の「妻無用論」「母という名の切り札」は半世紀前の文章なのに鋭すぎてぐうの音も出ない。

『家庭教育の隘路−子育てに強迫される母親たち』本田由紀
父親の関わり方が子に及ぼす影響についての分析がなくて、残念。母親について分析した本だから、と言われればそれまでだけど。

『〈子育て法〉革命』品田知美
超日本式育児が学級崩壊を招いているかは疑問だけど、育児法の変遷とか、今の育児法の息苦しさの原因とかわかって面白い。

『揺らぐ子育て基盤―少子化社会の現状と困難』松田茂樹
結局のところ、家庭環境、というかぶっちゃけて言っちゃうと親の職業とか年収とか学歴とかが子どもの成育に及ぼす影響は小さくないことが分かり、なんだかなあという気分。
育児ネットワークに関する考察では、インターネットを通じた交流については触れられてなかったな。03〜07年の調査だから、ネットの掲示板とかで子育て相談ってわりと一般化しててもおかしくないと思うんだけど。

『家事と家族の日常生活―主婦はなぜ暇にならなかったのか』品田知美
便利な家電も増えたけど、家事労働時間は減ってないよ、というお話。私が興味深かったのは、日本における家事時間は諸外国と比べて長いわけではない、ということ。ただし、有償労働の時間が長いので、総労働時間は長い。

上野千鶴子に挑む』千田 有紀編
フェミニズムってある種の古臭さを感じさせるものだけど、私が今、感じている困難や矛盾は、フェミニズムの領域の問題だということは事実なのが、なんともかなしい。残念ながら、過去のものではない。


とりあえずこんなところ。