「両立支援制度に甘えるな」を説く人への素朴な疑問。

両立支援を早期に取り入れ定着してきた企業においては、育休明けの社員たちをどう活用するかという課題も抱えているようです。

それでよく見るのが、「制度に甘えるな」論。育休だの時短勤務だのの充実した制度に甘えることなく、早期の復職や通常勤務を目指しましょうね、とか、育休中も勉強してスキルをみがきましょうね、みたいなの。今日の某経済紙夕刊でも見ましたが。


私が一度目の育休を取得した4年前は、そもそも育休を取得して復職する人はおそらく今ほど多くなかったからか、前回エントリの冒頭に書いたような「育休をこう過ごせ」的な情報が目に触れる機会は少なかったですし、会社のほうも社内イントラに自宅から接続するようなこともできなかったし、そもそも周りも私自身も「本当に復職するの?」って半信半疑状態(当時、身近には、育休復職者はいませんでした)。

というわけで、身も心もほぼ完全に会社から離れて(笑)、好きなように過ごしていました。そして育児に没頭してた一年間は、今もとてもいい思い出ですしそのことに後悔もないので、今から育休とるひとはそういう過ごし方もできにくくなるのかなーと思うと、ちょっと残念な気もします。

というか、「育休中にスキル磨き」だなんてことばっかり考えて育児生活に突入すると、育児がつらくなるだけなんではないかという懸念があります。赤ちゃんとの生活はそんなに甘いものじゃないですぜ。

私も二度目の育休中は資格の勉強もしてみたけれど、時間の取りやすさで行ったらむしろ仕事してるときのほうが簡単だったかも、と思いました。(長男育休明けに、通勤電車の中で勉強して資格とったときとの比較。)


「制度に甘えるな」論、私にはいくつか疑問があります。


1.なんで制度作ったの?
使ってほしくない制度なら作るなよ・・・っていう。あ、法律できたから仕方なく対応したんですね。はい。


2.制度利用してない人は甘えてないの?
その他大勢の社員のみなさんは、そんなにちゃんと働いているんでしょうかね・・・


3.制度利用してる人への処遇に問題はないの?
いつまでも制度使うってことは、たぶん、「(例えば時短なら)時短やめてもいいことない」からなんじゃないんですかね?止めるメリットがあればほっといても止めると思うんですよね。


4.介護のひとにもそれ言うの?
いつ終わるか分からない介護、衰えていく親御さんの面倒をみてる人に向かって「いつまでも甘えるな」とか言える?


5.ていうかだれが子どもの面倒見る想定なの?
夜までやってる保育園?学童?シッターさん?


6.ていうかなんで母親ばっかり子どもの面倒みてるの?夫はなにやってるの?
たいていの働く母は、帰宅後一人で子どもの面倒見てるから大変なんだと思うんです。夫婦そろって定時に仕事終われるような状況だったら、長期の育休とか時短とかとらないよって人も多いんじゃないでしょうかねえ。夫の定時退社も実現してくれないと困るんだけど。


日本では、「残業休日出勤出張転勤なんでもOK!なのとひきかえに、終身雇用など手厚い待遇が約束されているのが正規雇用者」なので、残業できない転勤とか無理・・・な子持ち社員が、でも雇用は守られてるし待遇良いしなんかずるいよね、ってなるのも、分かる。分かるんだけど。

だれかががんばって昇進していって声出してかないと、両立しやすい風になかなか変わっていかないってのも分かる。分かるんだけど。

でも、私が思うのです。
働く母たちが今おかれている状況っていうのは、社会がかかえるさまざまな矛盾のひとつの表れであって、母たちのの個人的な頑張りで解決できる問題ではないんじゃないの?と。