「迷走する両立支援」2010 〜格差と少子化の国のワークライフバランスは、いま〜 電子書籍を読んで

『迷走する両立支援』という本を読んだ皆さんがボランティアで集まり、著者の方との対談および交流イベントが2010年秋に開かれたそうですが、その様子をまとめた電子書籍がこのほど公開されました。
スタッフの皆さん、本当にお疲れ様です。

私自身もこの活動については当時から一応知ってはいたのですが、ちょうど次男妊娠中かつ自宅の引越しプロジェクトを抱えており、参加できず遠くから眺めるだけで終わってしまいましたので、このように書籍の形でまとめられたものを読むことができてとてもありがたく思っています。

『迷走する両立支援』自体も一年半ほど前に読みまして、当時の感想としては、(仕事と家庭の両立支援の問題点が書かれている本でしたので)「まあ、そんなに暗くならなくても、世の中ちょっとずつはよくなってきてるし」というものだった、ていうのが正直なところです。

私は2000年代前半に入社しましたが、その頃の雰囲気と今の雰囲気は明らかに違うと感じます。私自身、2度の産休育休から復職しましたし、ワーキングマザーの数も増えています。

一方、まだまだ課題は多いとも思っているのも事実です。先日のこちらの記事で、復職一年目が一番大変だった、ということを書きましたら、同意の意見がいくつも寄せられました。

しかもその理由が、「子どもが病気をして大変だった」とかの具体的なつらさというよりは、「(以前は残業しながら働いていたけれど、時短勤務や定時帰りなどで働くようになり)働き方が代わったことへの戸惑い」であるとか、「(妊娠や産休をきっかけに)業務が代わったことへの戸惑い」であるとかの、精神的なつらさが理由としてあがっていたことが、とても印象に残りました。そして、振り返ってみると私もそうでした。

おそらく、多くの働く母たちは、(いえ、働く母たちに限らないと思いますが、)仕事と家庭のはざ間で多くの葛藤を抱えており、それになんとか自分の中で折り合いをつけながら働き続けているのでしょう。私もそうです。


私としては、この電子書籍の中では26ページ目の著者のことばが心に残りました。

今子供を育てて働いている人には基本的に余裕はなくて、瞬く間にその日その日が過ぎていくけれど、その渦中で体験した悔しい思いとか疑問とか楽しいことをやり過ごしていくだけじゃなくて、今の社会にぶつけていくことが、ものすごく重要だし、そもそも、その存在、その生活自体にすごく意味がある。
「悩まないで、明るく子育てを」なんて本当の意味ではできない。その悩みは今の社会のあり方に起因するものでもあるのだから、大事にしてほしいし、悩む意味もある。

というようなものです。


私が理想とする生活と現実の間にはギャップがありますが、前述のように少しずつですが私をとりまく現状は改善してきていますし、現状の足りないところにばかり着目していると精神的にしんどいですし、これから子育てと仕事をしようという方たちにも希望と勇気を持ってほしい、という気持ちもありますので、、現状の中でもよい部分をとらえて、「とりあえず現実をよしとしよう」と納得しようとする気持ちが働きます。『迷走する・・・』を読んだときの感想はまさにそれです。

一方で、「まだまだ理想には程遠いではないか」と不満に思う気持ちももちろんあり、その間でゆれ、悩みはつきません。

しかし、その悩みを抱えていること自体にもまた意味があるし、自分の経験や考えをこうしてブログにまとめて発信していくことにもわずからながらでも意味があるのだとしたら、こんなにうれしいことはありません。